時折、散歩の途中で叔母と合流する。
どんなに叔母が素知らぬ振りを装っていても、イヴとナナはすぐに見つけ出す。
そして、彼女たちは私の持つリードを振り切って、一目散に叔母の元へ駆け寄るのだ。
嬉しくてたまらない時のラブラドール2匹が相手では、私はとうていかなわない。
叔母に向かって猪のように突進していく犬達を見て、道行く人はどう思うのだろうか。
笑い声をあげてイヴとナナを迎える叔母の姿を見ていてくれるだろうか。 |
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ナナが虚ろな目をして窓の外を眺めている。
二日続く雨はまだ許せる。
三日続くとイタズラするぞ。
一週間続くなら・・・どうするよ?
てるてる坊主でも作ろうか、ナナちゃん。 |
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小さな甥のために、お話を作ってE-mailで送る。
もたもたすれば、催促の電話が来る。
「ポテチとミロを用意したかなぁ?」で始まる私の物語の主人公たちは、いつも決まっている。
甥はいつだって、イヴとナナをお供に冒険へと旅立つのだ。 |
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Kさんちのパグは、時々家から脱走する。
しばらくすると、いつものように交番からお呼びの電話がかかって来る。
ある日、タクシーの運転手さんが、Kさんちのバグを交番に届けてくれた。
駅前で客待ちをしていたタクシーの後部座席に、ちゃっかり乗り込んだのだ。
交番からはいい加減にしてくれとお達しが下った。
飼い主に似るって本当ねとKさんに言ったら、彼は怒っていた。 |
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人間であればどんな人に対しても優しい気持ちを持っているイヴに、ただ一つの欠点がある。
外人さんが苦手なのだ。
どこの国の人に対しても駄目なんである。
わが家に外国の大切な人達をお呼びすることになると、イヴはもう大変だ。
どんなに犬好きのステキな方に対しても怯える。
さて、彼女はいったいどうやってこの辛い試練の一時を切り抜けるのか?
ドギードアから小さな家出をするのだ。
お客様が帰ることをひたすら祈って、イヴはドギードアの外でしょんぼりと過ごすのである。 |
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美大志望だった私は、高校の夏や冬の休みに、はるばる受験勉強を兼ねて上京していました。
高校一年の頃だったでしょうか。
夏期講習で行ったお茶美(通称です。お茶の水にあります)で、
私達受講生は石膏を前にして、鉛筆デッサンをしてました。
受講生はみんな私よりも年上で、自分がとっても心許なく覚えたものでした。
ある日、必死に石膏を睨んでデッサンに励んでいると、
講師が一人の男の子の前で足をとめたのです。
「君はどうして描かないの?」
「石膏像は白いのにどうして白い紙にデッサンが描けるのですか?」
彼の言わんとする理屈は理解できました。その理屈に妙な感激もしました。
が!・・・・白って、いろんな色を持っているのです。
犬を飼っていると、思いも掛けない感情に出会います。
犬は犬一色ではないのです。
影の色は何色で表すことができましょうか。
様々に変化し、喜びの色、悲しみの色、苦しみの色・・・・、人間と一緒です。
彼は石膏像の影を見ることができなかったのでしょうか?
もし、石膏像が白一色であれば、
石膏像はこの世に存在することも、目にみえることもないのです。
影があるからこそ、私達は存在するのではないのでしょうか。 |
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梅雨です。
空の具合を心配しながら、外に出ました。
なんだか雨の匂いが気のせいでしょうか、します。
遊歩道を連れだって歩いていると、ポタポタ・・・・・、やっぱり。
うらめしく思いながら歩いていると、後ろから少年が走り寄ってきました。
「撫でていいですか?」
「いいよ。はい、コレ持って」
なぜか、自然に私はこの少年にリードを手渡したのです。
すると、駆け寄ってきた彼の母親がそのリードをつかみました。
雨の中、三人と2匹は仲良くお散歩することになったのです。
コージくん、また、会いましょう。 |
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