まだ甥が赤ちゃんの頃です。
甥をかまうとイヴとナナが割り込む。
イヴをかまえば甥とナナが・・・。
ナナをかまえばイヴと甥が・・・。 |
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ずっとずっと、犬のいる生活をしたいと思う。
でも、人生の終末に差し掛かったら、どうだろうか?
犬を残して先に行くことはできない。
帳尻がうまく合えばいいのだけれど。 |
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雑種の可愛い犬を飼っている友人がいる。
彼はなかなかに躾が厳しく、犬もまたよく従うようだ。
いつものある日、エサを前にした犬に、彼は「おあずけ」と命令した。
すると、彼に電話である。
家の中に入った彼は、そのまま、犬の事を忘れてしまったのだ。
朝になって犬小屋の前に行くと、手つかずのきのうのエサを前に、
犬は悲しそうに彼を見上げた。
これを聞いた私の主人は、なんと利口な犬かと言った。
これを聞いた私は、なんとマヌケな犬かと言った。 |
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Kさんちのパグは、時々家から脱走する。
しばらくすると、いつものように交番からお呼びの電話がかかって来る。
ある日、タクシーの運転手さんが、Kさんちのバグを交番に届けてくれた。
駅前で客待ちをしていたタクシーの後部座席に、ちゃっかり乗り込んだのだ。
交番からはいい加減にしてくれとお達しが下った。
飼い主に似るって本当ねとKさんに言ったら、彼は怒っていた。 |
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夏休み中に滞在していた甥が東京へ帰った。
ある夜、甥は寝付く前にぽつりと言った。
「イヴとナナに会いたいよ。」
そうね、離れていても家族だもの。 |
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散歩の途中にある美容院の前を通りかかった。
そこで働いているらしい女の子がこちらを見ている。
何事もなく私たちは通り過ぎようとした。
「ワン、ワン、ワン」と大きな声。
振り向くと、先ほどの女の子がニコニコと立っている。
「ワン、ワン、ワン」と、また大きな声。
う〜ん、うちの犬達は日本語じゃないと理解できないの。
ごめんね。 |
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威風堂々とした犬を連れて散歩している人がいた。
アメリカン・ピットブルだ。
思わず車を停めて、声を掛けた。
すると、おじさんは大きく胸を張って言った。
「牛も殺すと言う犬ですよ。はっはっは。
今は凶暴さの為に輸入禁止です。はっはっは。
とても高額な犬ですよ。はっはっは。
吠え掛かる犬がいたら、殺っちゃいますよ、こいつは。はっはっは。
はっはっは、はっはっは、はっはっは、はっはっは。」
私は尻尾を巻いて、車を出した。 |
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イヴは触ってくれとよくせがむ。
時には、鼻面を器用に使って、私の手を自分の身体へと導く。
あまり触られるのが得意でないナナも、やさしく声を掛けながら撫でてやるとうれしそうな顔をする。
動物も人間も一緒だ。
触れ合わなくなった夫婦は心が離れ、
抱きしめられなくなった子供は心がすさむ。
イヴを撫でながらそんな事を思った。 |
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ある年の明け方、少々強い地震に叩き起こされた。
パニックに陥っている私の横で、主人が「よしよし」と声を掛けている。
私に・・・・・・?
いや、違った。
ベッドの上に飛び乗ったイヴは、震えながら主人になだめられているのだ。
ナナはというと、どうしたのかと言う顔でベッドの私たちを見上げていた。
ある日の夕方、ドカンと言うものすごい音。
雷である。
慌てふためいてドカっと起きたのは、ナナだ。
イヴは寝ぼけ眼でぼんやりと見上げた。 |
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イヴが床に寝ている。
ナナも床に寝ている。
私も床に寝てみる。
私は犬になった。 |
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